なぜ博士号をとったのに大学教員にならないのか

春が来て、僕の少ないポスドク(博士研究員)仲間たちがまた何人か大学を去っていった。 一流大学で博士号を取り、一流論文誌に研究を発表した彼らが、それでも大学教員になることをやめた理由はさまざまだ。 お金だったり、子どもだったり、別にやりたいこ…

先生の教え方、あるいは大学院生のなんでもない一日について

私は、先生に少しでも恩を返せたのだろうか? あの日も、先生は何時間も一緒にいてくれた。 お腹がすいて、二人で学食に晩ごはんを食べに行った。 夜遅くまでやってる食堂は隣のキャンパスにしかなくて、薄暗い道を街灯を頼りに20分くらい歩いた。 私は唐揚…

海外に行かずに留学と同じことを学べるか

「ここでは”Interesting”って言うのは禁止にしてるの」 彼女はそう教えてくれた。 「面白いって思った時に、”面白い”って言うとそれで終わっちゃうのよ。それって残念でしょ?」 「残念?」と僕は聞いた。 「そう。面白いことはもっと面白くしたり、別のアイ…

東大の院に合格して、地元の大学院を退学して、実家でバイト生活をした

東大の大学院に受かったら 合格発表があったのは、その年の9月なかばの頃だった。 そのとき僕は、自分が東大の大学院に合格したことを知った。 それから5日ほど、これからどうしようかと考えながら、ただぼーっとして過ごした。 大学はまだ夏休みだった。 …

「自分の頭で考えること」を学ぶ

「学生と先生②」はこちら いい大学に入るために「自分の頭で考えること」をやめた 振り返ってみれば、高校を卒業する頃、僕は「自分の頭で考える」ということをすっかりやめてしまっていたように思う。 良い(偏差値の高い)大学に入学するためには、自分の…

もう誰かをほめたり叱ったりするのはやめよう ― 『嫌われる勇気』書評

①はこちら この漫画をツイッターに投稿したら、「横の関係、という言葉が『嫌われる勇気』に出てくる」と教えてくれた人がいました。 (@hassy_07さん、ありがとうございました) さっそく本を読んでみたところ、「なぜ人をほめたり叱ったりするのがダメなのか…

いつかポスター発表をする人に伝えたいこと

初めてポスター発表をする。 そんな日が来る。 研究室に入りしばらくして、研究成果がまとまってきた頃。 研究の楽しさが少しわかってきた、そんな時期。 「学会」、あるいは「研究会」に参加することになる。 初めて参加する人間にとって、それらは憧れとあ…

「研究では食べていけない」をトレーラー運転手になった飛び級入学者の記事で考える

佐藤和俊さん(39)の新聞記事を読んだ。 今から22年前、佐藤さんは飛び入学制度の日本初の合格者になった。 千葉大学が、高い専門能力を持つ「とんがった高校生」のために作った制度だった。 佐藤さんは<物理のスペシャリスト>として、当時17歳で大学生に…

論文を書くときに役立つサイト・文献まとめ

「論文を書くことは技術である。技術を習得するのに才能は要らない。理にかなったことを地道にトレーニングすれば、技術は確実に向上する」*参考『論文の書き方』石黒圭 私はこのことを学生の時に教わりました。 そして今日まで書いてきた論文のいくつかは、…

【4コマ】議論がつらい時は相手をネコだと思おう

正直この秘技を皆さんに明かすべきかどうか、3日3晩悩みました。 もしこの技を全ての学生が使えるようになってしまったら、研究室における勢力図は一気に書き換わってしまうだろうからです。 これまで大学の教員たちは、権力や研究費、単位や怖そうな見た…

【4コマ】若手研究者がレビューを書くと良いことまとめ

4コマには先生に無茶ぶりされた時の話を書きましたが、その後もっと落ち着いて、3ヶ月くらいかけてレビュー(総説)を一本書く機会がありました。 書いてみると良いことがたくさんあったので、よかったらついでに聞いてください(4000字)。 レビューを書…

大学の研究室に初めて入った日の話

「来月からお世話になります!よろしくお願いします!」と、彼は僕に頭を下げた。 4月から新しくうちの研究室に入ってくる、修士1年生の男の子。 「こちらこそ、よろしくお願いします」と言いながら、僕は彼のキラキラした目を見ていた。 きちんと整えられ…

【4コマ】論文を出すにはどうしたらいいのか

この4コマに、 「どうしても発表論文数を増やしたかったときの話」 とタイトルをつけてツイッターに投稿したら、 「まずどうして論文を増やしたいと思ったのかわからない」 とコメントをくれた人がいた。 おかげで思い出したことを書きます。 どうしてもす…

論文の数や雑誌を言わなくたっていつか伝わること

そのスライドが映された時、会場から拍手が起こった。 僕の隣にいた先生が、すばらしい、とつぶやいた。 とても綺麗なデータだと、僕は思った。 だけどそんなにすごいものだろうかと、不思議にも思った。 *** 僕が大学4年生だった時、学内で開催されたシ…

【8コマ】学生と先生のあいだ

僕が最後に学生だったときからもうずいぶん時間はたっていて、だけど先生になるのはまだ先のような気がする。 そんな学生でも先生でもないからわかることもあると、思うことがある。 講義とか学生の指導や研究室運営のもろもろを義務としてやるようになると…

もし知っていたらダメな研究計画書を書かずに済んだこと

「研究計画書を書いたので見てもらえませんか?」 と学生からメッセージが届いた。 添付されていたそれを読んでいると、僕が研究計画書を初めて書いた頃のことを思い出した。 今からもう7年くらい前のことだった。 あの時、僕はどうにかして採用される計画…

【4コマ】研究について議論する時はスポーツだと思うといい

僕が初めて研究議論の仕方を教わったのは、大学3年生の時でした。 当時僕が取っていた講義で、グループで好きなテーマについて調べて発表することになりました。 発表会の日、僕たちは調べた結果について10分くらいのパワポ発表をしました。 質疑応答の時…

大学を辞めようと思っていた博士課程の院生が北欧に短期留学して救われた話

「あぁっもう、くそっ!」 誰かがそう言って机を叩く音が、今日も研究室に響いていた。 談話スペースの方から大きな笑い声がする。 隣の留学生のイヤホンからもれた音楽が聞こえる。 あの頃の僕はそういうことにイライラして、研究が進まないでいた。 あるい…

【4コマ】論文とか先生や先輩が何言ってるのかわからなくて絶望したとき

研究は愛と好奇心でできている、と彼女は別に言ってないけれど

研究室の建物を出ると、夕焼けで空がオレンジ色に染まっていた。 人がまばらになったキャンパスで、学生の男女が二人楽しそうに歩いていた。 男の子が何か言うと、女の子が笑って男の子の腕を叩いた。 男の子は大げさに痛がって、それから女の子と手をつない…

誰かの論文を読むとき、自分が研究者に向いているかわかる

科学論文を読むということをどれくらいの人がするのだろうか。 本屋でたまたま手に取った本をみていると、ふとそう思った。 アメリカ人の医師が書いたというその食事に関する本には(まるで僕らが普段目にする専門書みたいに)10ページ近い参考文献リストが…

卒業研究発表のスライドに悩んでる時間は僕たちにはない

今年もまたこの季節がきた。 大学では、学生が毎日どこかで研究発表をしている。 卒業研究発表会や、修士論文・博士論文審査会とか、その練習で。 いつもはジャージでふらふら廊下を歩いている大学院生が、スーツを着てトイレでネクタイを直していたりする。…

研究室をえらぶ理由をもし一つだけあげるなら

(指導教員への圧倒的感謝をこめて) 「そうですか、お名前は?」 「森野といいます!」 そのときぼくは、居酒屋の個室の前で、ひっしに自己紹介をしていた。 部屋の中には先生たちがたくさんいて、一番奥の先生は学会の会長をしているそうだ。 ぼくのとなり…

「研究が楽しいから」と言うたびに僕が思うこと

「何で大学院に行ってるんですか?」 はじめて行った街コンで、出会った彼女はそう言った。 「何でって…研究が楽しいから」 ぼくはそう答えた。 「ふぅん。どんな研究してるの?」 「薬を作る研究。抗がん剤とか」 ほんとはぼくの研究はもっと基礎的なもので…

はじめに、はかせになりたいと思ったとき

(このブログの紹介記事です) はじめまして、森野キートスです。 ぼくがはじめて研究者になりたいと思ったのは、大学3年生のある日のことでした。 その日はあたたかく晴れていて、大学の食堂で昼ごはんを食べたあと、先生の部屋に向かいました。 ぼくの学…

どうして修士卒で就職せずに博士課程に進むのか

世界の主要国で博士号取得者の数が増え続けている。 そんな中、「優秀な学生がどうしてお金を借りてまで博士課程にいき、博士号を取ろうとするのかわからない」という海外の記事を見かけた。 企業に就職すれば、研究をしながら高い給料がもらえるのに、とい…

研究発表の準備をしようと思っていた大学院生の9時間15分の恋

地上一万メートルの上空で、そのときぼくは恋をしていた サンフランシスコ行きの飛行機の中で、ぼくは隣に座っている女の子と今観たばかりの映画について話をしていた。 こんなことを書くと、日頃モテなさすぎてついに妄想の世界の住人になったかと思われそ…

他の研究者とつながるにはどうしたらいいか少しわかった気がした初めての海外発表

研究者になりたければ業績が必要だ。 業績とは何かっていうと、社会つまりは人への貢献度。 だから人とのつながりは自分の業績に直結する。 研究を続けたいなら、他の研究者とのつながりは必須だ。 今回は、ぼくが初めて海外の学会に参加したときのことを例…

英語論文が出せなくてすべてが終わる前に

「英語で論文を出す」 それができないと研究がなかったことになる。 そうやって消えた研究って実は山ほどあって、もしそれが残ってたら科学は今よりもっと進んでたりするんだろうか。 英語で論文が出せさえすれば、自分の研究もいつか誰かの役に立つかもしれ…

英語での研究発表が不安だから英会話教室に通う大学院生に伝えたいこと

英語で研究成果を報告することは、研究者にほぼ間違いなく要求されることだとおもう。 ではこの国の研究者は研究時間を削って英語のトレーニングをするべきなのだろうか? 「英文校正費がないと論文がリジェクトされる」とツイッターでつぶやいたところ、英…