【寄稿】研究者を初めて身近に感じたあの日

学部4回生の、研究室に配属されて1ヶ月くらいのことです。 授業の出席率も低く、留年すれすれの成績で研究室に配属された僕は、当時は研究室の具体的なテーマはおろか、なにを扱っているのかさえ、よくわからない状況でした。 そんな感じだったので、自分の…

【寄稿】簡単に卒業できてしまう研究室

私は、最近流行りのAI・深層学習等の研究室に所属する情報系の大学院2年生です。 今は、2月中旬の修論提出・発表会に向けて、日々作業に追われています。 そんな私が学部4年生の時に、今の研究室に行こうと決めた理由は少し変わっていました。 私の教授は、…

研究にいちばん役に立つこと

大学院1年目の夏、私は毎日のように先生の部屋に行った。 学会の締め切り間近であせっていた。 「無理に発表する必要はない」 と研究室の人たちは言ってくれた。 でも、他の研究室の同級生たちは発表することが決まっていた。 私もなんとか発表がしたかった…

【募集】研究の思い出

「研究の楽しさを知ってほしい」とか、「自分と同じ失敗をしてほしくない」という思いは、きっと伝わると信じています。 よろしければ皆さまの研究の思い出を教えてください。 ブログやツイッターで紹介させていただきます。 専門用語少なめの優しい言葉で書…

研究室で情報共有に失敗した理由3つ

僕たちの失敗 僕が学部の4年生だったとき、研究室の先輩が言った。 「研究室のウィキを作ろう」 「なんですか?」 と僕は聞いた。 「ウィキペディアみたいに、研究室のことが何でも書いてあるウェブサイト。そういうのがあると、いちいち人に聞かなくてすむ…

論文の読解力レベル1〜3

レベル1.内容がわかる 論文を読むのは暗号の解読みたいだ、と大学生のとき私は思った。 あのころ私は、研究室の机に座って一日中、論文を読んでいた。 読んでいたというか、少し読む→知らない単語が出てくる→辞書で調べる、ということをくり返していた。 …

ずっと先生の話聞いてなかった

大学院のころ、僕には憧れていた先輩がいた。 憧れていた、というのは、 「いつか先輩みたいになりたい」というよりは、 「いつか先輩と一緒に観覧車に乗りたい」という方だ。 恋愛的な方だ。 しかし、この記事で伝えたいことは、恋愛的なことではない。 僕…

ポスドク10年の先輩と就活

ポスドク2年目のある日、転職会社に行った。 友達がポスドクをやめて、結婚した。 結婚かあ、きっと幸せなんだろうな。 そう思って僕は、「ポスドク 転職」で検索した。 転職会社の担当者は、 「今より年収が下がることはないです」と言った。 テーブルの上…

なんで論文なんか書くのか

私がポスドクになって今の研究室に来たとき、イトウくんという学生がいた。 彼は学部の4年生で、卒業研究をやっていた。 私と彼は研究テーマが似ていたから、よく並んで座って話をした。 キャンパスのイチョウが黄色くなった頃、 「卒研発表までもう3ヶ月…

研究で失敗するのが怖い

電車の中で、冷や汗がとまらなくなったことがある。 大学院の卒業間近の頃だ。 その日僕はいつものように一番後ろの車両の隅に立って、スマホで論文を読んでいた。 朝のラッシュは過ぎた後で、電車は空いていた。 窓から射し込んでくる光がまぶしかった。 見…

論文やる気出ない午後は未来のあの子を思う

やる気が出ない。 平日の昼過ぎ、僕は研究室でぼんやりとパソコンの画面を眺めている。 「やるきがでない」と打ちこんで検索してみると、「やる気が出たから行動するのではない。行動するからやる気が出るのだ」という言葉が出てきた。なるほど? 僕はしかた…

論理性を鍛える方法

「その論理はちょっと私にはわかりませんね」 僕は学生のとき、いったい何回先生にそう言われたんだろう。 研究の打ち合わせのときや、ラボのミーティングで、あるいは論文を添削してもらったときなんかに、先生は僕によくそう言った。 そんなとき僕は、「論…

察することを求めない

* * * 「先生は元気?」 と、彼女が私に聞く。 「変わらない」 と私が言うと、彼女は笑う。 私と彼女は同じ研究室の同期だった。 研究室を卒業した後、彼女は地方の大学の講師になり、私はポスドクとして東京に残った。 先生と話すのは苦手だったな、と彼…

大学で楽しく学問をしてほしい(2)

(前回記事↓) 「簡単に卒業論文が書ける研究テーマってなんだろう?」 それが研究室に入ったとき、僕がまず考えたことだった。 ほかの研究室に入った友達によると、卒論のテーマは先生が教えてくれるらしい。 「研究テーマの候補を先生がいくつか出してくれ…

大学で楽しく学問をしてほしい(1)

夏は高校生とお話できる季節だ。 オープンキャンパスのおかげである。 もしそんなイベントがなければ、いつも研究室に引きこもっている僕に、青春そのものみたいな人たち(高校生)と言葉を交わすチャンスなどない。 ありがとう、ありがとうオープンキャンパ…

楽しく研究の話がしたい

「なんでうちの研究室を選んだの?」と、学生に聞いたことがあります。 学生たちの答えは、 「研究テーマがとても面白そうだった」という建前から、 「研究室の場所が家から近かった」などの本音まで、さまざまでした。 そんな理由の中に、 「研究室見学に行…

常識?

遠い昔、ダウンタウンのまっちゃんと元SMAPの中居くんがダブル主演でドラマをやっていた。 (伝説の教師 VOL.1 [VHS]) そのころまだ子どもだった僕は、そのドラマのマネをして、 「常識ぃ? その常識って誰が決めたんじゃい!」(まっちゃんのセリフ) とか言…

先生って呼ぶのは無しで

先生は「先生」って呼ばれるのをきらってた。 私はそれを、先生の照れだと思ってた。 「先生なんてガラじゃない。フランクにいきましょう」みたいな。 でも私からしたら、それは逆にやりにくい。 大学にいるかぎり、先生は先生で、私は学生だ。 「先生」って…

論文を読む理由

大学へ通う電車の中で、論文を読んでいる人を昔よく見かけた。 その頃まだ学生だった私は、そんな人たちを見つけては、「卒論の時期だな」とか、「ゼミ発表が近いのかもしれない」と、論文読んでる理由を勝手に想像してた。 「なにも電車の中で読まなくても…

人は知ってることしか見えない

大学院に入ったばかりの頃、配属された研究室で研修を受けた。 僕は先輩について回って、実験機器を使ってみたり、実験ノートのとり方を教えてもらったりした。 ある日、先輩が先生たちとミーティングをするというので見学させてもらった。 そのときのことは…

質問しないことは悪いことなのか

「他に質問はありますか?」 と、先生が聞いた。 みんなは何も言わない。 「では、終わりましょう」 先生のその言葉で、研究室のセミナーは終わった。 私のいる研究室では、週に一度セミナーがある。 セミナーでは、研究室のメンバーが持ち回りで研究の進捗…

研究室訪問と恋

ひとめぼれだった。 夜7時の渋谷駅、井の頭線の改札前で僕は彼女に会った。 長くて黒い髪、まっしろな肌、ネコみたいな目。 彼女を見たとき、駅の喧騒が遠くなった気がした。 「佐倉です。はじめまして」 彼女がそう言った。 僕は頭を下げた。 グリーンのパ…

「わかった」にとりつかれて研究者になる

図書館に行くのが好きだ。 書架に並んでいる本を眺めながら歩いていると心が落ち着く。 研究室での作業に疲れたときは、よく図書館に行ってただぼんやりと歩いている。 静かな空気や紙の匂い、絨毯をふむ感触が好きだ。 晴れた日には窓際の机につっぷして寝…

なぜ博士号をとったのに大学教員にならないのか

春が来て、僕の少ないポスドク(博士研究員)仲間たちがまた何人か大学を去っていった。 一流大学で博士号を取り、一流論文誌に研究を発表した彼らが、それでも大学教員になることをやめた理由はさまざまだ。 お金だったり、子どもだったり、別にやりたいこ…

先生の教え方、あるいは大学院生のなんでもない一日について

私は、先生に少しでも恩を返せたのだろうか? あの日も、先生は何時間も一緒にいてくれた。 お腹がすいて、二人で学食に晩ごはんを食べに行った。 夜遅くまでやってる食堂は隣のキャンパスにしかなくて、薄暗い道を街灯を頼りに20分くらい歩いた。 私は唐揚…

海外に行かずに留学と同じことを学べるか

「ここでは”Interesting”って言うのは禁止にしてるの」 彼女はそう教えてくれた。 「面白いって思った時に、”面白い”って言うとそれで終わっちゃうのよ。それって残念でしょ?」 「残念?」と僕は聞いた。 「そう。面白いことはもっと面白くしたり、別のアイ…

東大の院に合格して、地元の大学院を退学して、実家でバイト生活をした

東大の大学院に受かったら 合格発表があったのは、その年の9月なかばの頃だった。 そのとき僕は、自分が東大の大学院に合格したことを知った。 それから5日ほど、これからどうしようかと考えながら、ただぼーっとして過ごした。 大学はまだ夏休みだった。 …

「自分の頭で考えること」を学ぶ

「学生と先生②」はこちら いい大学に入るために「自分の頭で考えること」をやめた 振り返ってみれば、高校を卒業する頃、僕は「自分の頭で考える」ということをすっかりやめてしまっていたように思う。 良い(偏差値の高い)大学に入学するためには、自分の…

もう誰かをほめたり叱ったりするのはやめよう ― 『嫌われる勇気』書評

①はこちら この漫画をツイッターに投稿したら、「横の関係、という言葉が『嫌われる勇気』に出てくる」と教えてくれた人がいました。 (@hassy_07さん、ありがとうございました) さっそく本を読んでみたところ、「なぜ人をほめたり叱ったりするのがダメなのか…

いつかポスター発表をする人に伝えたいこと

初めてポスター発表をする。 そんな日が来る。 研究室に入りしばらくして、研究成果がまとまってきた頃。 研究の楽しさが少しわかってきた、そんな時期。 「学会」、あるいは「研究会」に参加することになる。 初めて参加する人間にとって、それらは憧れとあ…