いつか博士になる人へ

あるポスドク研究員の思い出

他の研究者とつながるにはどうしたらいいか少しわかった気がした初めての海外発表

研究者になりたければ業績が必要だ。

業績とは何かっていうと、社会つまりは人への貢献度。

だから人とのつながりは自分の業績に直結する。

研究を続けたいなら、他の研究者とのつながりは必須だ。

 

今回は、ぼくが初めて海外の学会に参加したときのことを例にして、研究者としてどうすれば人とのつながりができるのかを考えてみたい。

 

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私は学生です。学会に参加するためにアメリカにきました。

入国手続きでそう伝えたら、「いいからこのカメラをみろ」と言われて写真を取られた。

はじめて論文を投稿してから半年後、生まれてはじめてアメリカに来たぼくは、

道端に一軒家くらいでかい石があるのをみて驚いたり、

サブウェイでサンドイッチ食べようとしたけど、最初にパンのサイズを聞かれてるのをパンの種類と勘違いして「プレーン!プルゥウェィン!」と1分ほど連呼して店員さんにドン引きされたり、

アメリカ版楽天トラベルみたいなやつを使ったせいでホテルが予約できてなかったりしたけれど、

なんとか学会初日を迎えました。

(ちなみにホテルはマネージャーみたいな人が出てきてなんとかしてくれた。二度とあのサイトつかうんじゃねぇぞってめっちゃ怒られた。でもありがとうベストウエスタン。ご予約はホームページから)

 

学会初日の午後6時半。

口頭発表がすべて終わって、会場の通路にところせましとポスターが並ぶ。

エントランスには瓶ビールとかが山盛り置いてあって、飲みながら議論しろということらしい。

 

ふわふわした気持ちでポスターを見て回っていると、スティーブ先生の名前を見つけた。

イギリスの有名な先生で、前にスティーブ研から留学生がうちのラボにきたことがあって、研究内容はわりと知ってた。

ポスターの横に立っていたイギリス人らしき人に勇気をふりしぼって言ってみた。

 「Would you tell me about the method?」

彼(スティーブ研のボブ)は丁寧に説明してくれた。

ぼくの発音が悪くても、何度も聞き返して質問に答えてくれた。

彼は理論の人で、ぼくが同じ系の実験をしていることにすごく興味を持ってくれた。

特にぼくがこれから実験で調べようと思ってたことについて、未公開のシミュレーション結果を教えてくれた。

これは先生と議論しないと。

ボブのおかげで、かなり緊張がほぐれた気がした。

 

誰もぼくの発表を聞いてくれなかったらどうしよう

圧倒的不安の中でポスター発表の日を迎えた。

でも発表の時間になってすぐ、昨日のボブがぼくの発表を聞きにきてくれた。

そのあともとぎれることなく人がきて、ぼくは必死の英語で説明した。頭が沸騰しそうだった。

 

あるアメリカ人にポスターのデータを送ってほしいからとメールアドレスを聞かれた。

喜んでアドレスを伝えると、彼は全部大文字で書いていたので、小文字だよと言ったら、それは大丈夫だからとあきれられた。

(あとで未発表のデータを送るのはやめたほうがいいと先生にいわれました)

 

そのとき、日本人っぽい人が近づいてきた。

その人はすごい流暢な英語で話しかけてきた。

 

その人「I don't know much about the experiment but...」

ぼく「(あっ、日本人じゃないんだ)」

〜(ぼく英語で説明)〜

その人「uh~huh. なるほど、よくわかりました

ぼく「えっ…日本人ですか?」

その人「はい(ニヤニヤ)川上といいます」

ぼく「なんだ。言ってくだされば日本語で説明したのに」

川上さん「いやいや、誰でも聞けるように英語でやるべきですよ」

 

川上さんはぼくの先生と知り合いで、ラボの学生の様子を見てくれてるようだ。

ぼくは日本語に安心したのか、いつもよりよく喋った。

 

川上さんは北欧のある国で研究してると言っていた。

日本の学振PDのような立場で、一応教授のラボに所属しているけれど、研究費と給与はその国から出ていて、独立した研究者とみなされるらしい。

 

このしばらく後、ぼくは川上さんの研究室に留学することになる。

 

研究者とつながる方法

はじめて海外の学会に参加したから、というのもあると思うけど、このときいろんな人と知り合いになることができた。

そこで、他の研究者とつながりをつくるにはどうすればいいのかまとめてみたい。

 

1. 学会に出て情報交換する

学会で発表したことがある人は覚えがあると思うけど、いい質問をくれた人の顔はわりと覚えてる。

ポスター発表で議論がもりあがったりするとすごくよく覚えてる。

じゃあいい質問をしたり、議論をもり上げるにはどうすればいいのか?

 

トム・ガリー先生によると、「コミュニケーションの基本は相手が知っていることを考慮すること」

だから、

  1. 相手が知ってることを知ってる(相手の研究に関する知識)
  2. 相手が知らないことを知ってる(自分の研究に関する知識)

この二つの知識があれば研究のコミュニケーションはうまくいく。

自分の専門知識は日々磨くとして、学会で質問するときは相手の研究について少し調べてから聞くといい。

ただ話しかけるのは相手の時間を奪うだけだからダメで、相手にも何かいいことがないか考えるといい情報交換ができると思う。

 

 

2. 海外の学会で日本人とも話す

出会った場所はその後の人間関係を大きく左右する。

海外ってアウェーだと、日本人の間で仲間意識が強くなる。

とくに小規模な学会だと研究分野も近くて、お互いに世界で戦っている仲間って意識ができやすい。

ずっと英語で受け答えした後、ふと日本人と日本語で会話すると、お互い安心して話せて会話がはずむって経験は多いと思う。

とくに海外在住の日本人研究者の場合、普段英語でコミュニケーションしてるせいか、日本語の会話をとても歓迎してくれるし、その人を通していろんな人たちとのつながりができたりする。

 

3. つながりの多い研究室に入る

新しいつながりはすでにあるつながりから生まれる。

自分が研究者として一番強くつながってるのってラボの人たちだから、ラボにどんな人がいるのかってすごく大事。

例えばラボの先輩が共同研究してると、外の研究者の人たちがたくさんラボに出入りしていろんな話が聞けたり。

例えばラボの助教さんが顔が広くて、学会に行くといろんな人と話をさせてくれたり。

 

あとネットワーキングに限らず、周りの人の影響ってほんと絶大だと思う。

例えば受験だと、「進学校の最大のメリットは東大に受かる先輩が普通にいること」らしい。

あの人もあの人も東大に受かるなら俺も受かるなって、合格してる自分のイメージができる。それが普通になる。

これは研究の場合も同じで、あの先輩もあの同期もNature姉妹誌に出してるなら、きっと私も出せるってイメージできるし、そのために自然に努力できる。

逆に想像できないと何も始まらないから、周りにいる人がすごいってことは自分の可能性をすごく広げてくれる。

 

  

だからもし今よりもっといい環境になると思うなら、ラボを移るってことも考えてもいいと思う。

こういう将来についての難しい判断ってわりとデフォルト(現状維持)を選びがちだし。

 

(ラボを移ることについてはこちら)

www.ki1tos.com

 

 

というのが、ぼくがはじめて海外で発表したときのことを思い出してみて考えたこと。

 

ところで、学会で外国人のふりして学生に話しかけるとわりと最悪の第一印象になりますね。ヤベェ人なんじゃないかと心の隅に影がだいぶ残ります