ハカセのあやしい研究ノート

いつかはかせになるひとへ

英語論文が出せなくてすべてが終わる前に

「英語で論文を出す」

それができないと研究がなかったことになる。

そうやって消えた研究って実は山ほどあって、もしそれが残ってたら科学は今よりもっと進んでたりするんだろうか。

英語で論文が出せさえすれば、自分の研究もいつか誰かの役に立つかもしれない。

 

そこでどうすれば英語で論文が出せるのかを考えてみたい。

ぼくが英語論文を出すことについて、いちばん多くを学んだのは初めて投稿したときだと思う。 

  

ぼくならきっとうまくいくと思った修士1年目のおわり 

大学院に入って1年目の冬、ぼくは先生と話し合って国際会議に論文を投稿することに決めた。

やっていた研究がうまくいった。

すぐに論文にとりかかれば投稿〆切になんとか間に合いそうだった。

時間に余裕は全くなかったけど、自分ならきっとなんとかやれると思った。(あの自信はどこへ行ってしまったのか)

 

投稿した論文がもし受理されたら、半年後にアメリカで行われる会議で口頭発表することになって、論文はプロシーディングスとして出版される流れ。 

英語で論文を書く訓練は学部の頃からやらされたやってきたけど、出版した論文なんてまだ一本もなかった。

それなのに締め切りがある投稿論文を書くなんて、プレッシャー山のごとし。

 

書くのマジで全然進まない。何をどう書いていいのかわからん。

日本語の論文が書けるからって、英語の論文も書けるわけじゃないことがよくわかった。

とりあえず英訳してみたぼくの文章はなんというか、控えめに

稚拙。

 

研究に関連する英語論文を見て、そのクオリティの差におどろきをかくせない。

なんとなく使うべき英単語や表現がありそうなのはわかる。でもそれだけ。

ぼくが今使うべき言葉はわからない。なーんにもわからない。

 

だからひたすら論文を読むことにした。少しでも関係ありそうな論文をかたっぱしから読んだ。

このときすごいきれいな論文を一つ見つけた。

とりあえずその論文の構造をマネして書いてみると、不思議と頭にあったいろんなことがつながりだして文章ができていった。

自分のやった研究がどんどん英語で論文になっていくのはすごい楽しかった。

その時期はちょうど国内の学会シーズンで、昼間は学会に出て、夜はホテルにこもってひたすら論文を書いた。(トモダチトノムってなんですか?)

 

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これならもしかしていけるんじゃないかと思った。

  

査読の結果

投稿して1ヶ月後、査読の結果が届いた。

"We regret to inform you that your submission has not been accepted."

リジェクト。

ぼくの自信はこなごなになった。

 

査読コメントを紹介しよう。

"This model does not make sense to me. (この理論は意味がわからない)"


"The current paper feels unprofessional. (この論文はプロ失格だ)"

 

"Any firm conclusions can be drawn from this study. (この研究は結局何も報告していない)"

 さんざんだ。(そこまでいう)

 

エディターもかわいそうだと思ったのか、査読レターの最後に「まぁポスター発表する価値はあるんじゃない?」と一言添えられてて、結局ぼくはこの国際会議にポスター発表で参加することになった。

 

英語論文を出すためにできること

この件でぼくが学んだことは大きく3つ。

 

1. 〆切を作る

研究論文は〆切がないことの方が多い。

だって論文は研究成果を報告するもので、いつ成果が出るかはわからないから。

〆切がないから、いつ論文を投稿するかは自分で決めることになる。

するといつまでも論文を書かなくて、いつまでも投稿できないってことになる。

 

「わたしは完璧な論文が書けるまで投稿したくないからそれでいい」っていうのは、完璧な技術が身につくまで仕事をしないって言ってるようなものだと思う。

研究者は論文を出すまでが仕事だから、それじゃ食べていけない。

「わたしは学生だから仕事しなくてもいいじゃん。気が済むまでやらせてよ」って言われれば、まぁそうですよねって思うけど、研究者になりたければ学生のうちから仕事してることが求められる競争社会じゃないですか。

 

だから研究成果が出たら、はじめは〆切がある学会や雑誌に投稿するのがおすすめ。

ぼくみたいな人間も必死で書いたし、先生方も間に合うように見てくれるし。

それがムリなときは、自分の中だけでも〆切を決めるといいと思う。

 

 

2. 科学英語の基礎を学ぶ

英語で論文を書くには、ただ日本語を英語に翻訳すればいいというわけではなくて、論文にふさわしい単語や表現がある。

それはただの決まりではなくて、論理のつながりや事実と推測と違いなど、情報を確実に伝えるために必要なもの。

だから論文英語は、ただ英語っていうよりは科学の言葉と言ったほうがいいのかも。

 

彼女の父は常々こう言っていた。
真理を探究する者は傲慢であってはならない…
科学の言葉で語り得ないからと言って、奇跡を笑ってはならない…
この世界の美しさから、目を背けてはならない、と…

(CLANNAD 第13話より)

 

科学の言葉で書かれてないと、どんないい研究も伝わらない。

まずは科学英語の基礎を勉強しておけば、あとは経験を積んでいくうちにどんどんできるようになっていくと思う。 

 

 

3. 論文をたくさん読む

考えを言葉にするためには、その言葉を知っていないといけない。

多くの言葉を知っていると、自分の考えにぴったり合う言葉が使えるようになる。

 

あとは自分がいっぱい考えたことの中から、限られた紙面でどれを伝えるべきか知ること。

例えばみんなが知ってることは何で、まだ知らないことは何かとか、どうしてそれを伝えるといいのかとか。

 そういうことは結局、すでに出てる論文がいちばん教えてくれると思う。 

 

 

おわりに

ぼくが初めて投稿した論文は、聞きたくないくらい最低の評価だった。

だけどそのおかげで、研究者として認められるにはどのくらいのレベルが必要なのか少しわかった気がした。

批判されるのはつらいけど、ぼくの論文を隅から隅まで読んでくれたことはよくわかった。

指摘されたところをなおせば、きっともっといい論文になると思った。

 

以上がぼくが最初に論文を投稿したときの思い出。

そのあとすごい時間がかかったけど、この論文は分野のトップジャーナルに載りました。

人から評価されてはじめて自分と目標との距離とか、その間をどう進めばいいのかが具体的になる。進まないっていう選択もできるし。

ダメならダメで、早く言ってもらうといいと思います。

 

でも、もう少し優しい言葉で言ってくれてもよかったんじゃないかといまも思っています(闇)