博士になりたい情熱とお金がない現実のあいだ

こんばんは、森野キートスです。

急に寒くなってきましたね。

長袖を引っ張り出した今日この頃ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

僕は最近少しカレーを食べ過ぎました。

 

 今日は前回の続きで、給付型奨学金をもらったときの思い出を書いていこうと思います。

 

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 では今日もよろしくお願いします。

 

 

博士の悲惨な現実

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博士課程教育リーディングプログラム(通称:リーディング大学院)の説明会のあと、僕はこのプログラムに応募することに決めた。

 

大学で好きな研究を続けていくには、まずお金が必要だ。

「研究者は研究のことだけ考えていればよく、お金のことなんては考えなくていい」

なんて言えるのが理想だとは思う。

昔はそんなときもあったんでしょうね。

教育職につけば借りた奨学金の返済が免除になった時代。

 

今そんなことしたらどうなるか。

とりあえず誰でも借りれる貸与型の奨学金を借りて、大学院に入って5年研究を続けたらどうなるのか。

僕が学部生だったとき、ポスドク1万人計画で溢れかえったポスドク問題がメディアで盛んに取り上げていた。

「世界がもし博士が100人いる村だったら、8人は行方不明か死亡している」なんて話を当時の大学の先生から聞いた。

博士には夢も希望もない時代だった。

 

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僕が学部4年生のとき、研究室のD3(博士3年生)の先輩に地元のテレビ局が取材にきた。

僕が参加してた研究室ミーティングにもカメラが入るということですごく興奮したのを覚えてる。

そのときは修士の人が研究の進捗報告してたけれど、そわそわして全く頭に入らなかった。

僕が通っていたのは地元ではトップの総合大学だったし、やっぱりいい研究してる人は注目されるんだなーとか漠然と思ってました。

でも実際放送されたのを見てほんとびっくりした。

研究のことなんて少ししか紹介されなくて、先輩が自宅でスパゲッティ作ってるところがテレビにうつってた。

狭いワンルームの部屋に、スーツ着たアナウンサーのおねえさんがおそるおそる入っていく様子。

先輩がスパゲティを作る背中。

アナ「食事は自炊が多いんですか?」

先輩「そうですね、だいたい作ります」

こたつ机に座ってスパゲッティ食べる先輩のアップ。

アナ「彼女とかいますか?」

先輩「いません」

 

ナニコレ?

 

その先輩は量子化学計算を薬剤候補分子の大規模スクリーニングに使えるようにしたすごい人なんですけど?

そのあと先輩の月の収入はいくらしかないことや、大学院卒業したあとの就職先は決まってなくて不安だ、みたいなことをテレビが教えてくれました。

翌日、先輩にあったとき

「放送見ましたよ」

って言ったら、

「あ、見たんだ。実はね…あのとき部屋すっごい掃除しました」

って笑ってた。

その顔見て、なんでかせつない気持ちになったのを覚えてる。

 

「お金をなんとかしないと、ぼくは博士課程には進めない」

これが僕が学部生だったとき感じたことでした。

 

 

お金をもらえるかどうかは申請書が9割

 プログラムに応募するにあたって、まずは書類審査の準備を始めました。

研究計画書、研究実績のまとめ、指導教員からの推薦書の3つが必要だった。

  • 推薦書は先生にお願いするだけ。自分でドラフト作ってもってこいって先生から言われるラボもある。
  • 研究実績なんてM1(修士1年生)はほぼ無に等しい。せめて学会発表したこととか、研究会に参加したことが書ければいい。
  • つまり実質、研究計画書の勝負になる

応募書類の中に研究計画書のフォーマットがあって、それを埋める形で書く。

フォーマットは学振DCとほぼ同じだった。

こんなふうに修士課程で申し込めるものは研究計画書をいかにうまく書くかで決まるから、自分の努力次第でなんとかできる可能性が高いのがいいところ。

これが博士課程になってから応募するものだと(学振DC2とか)、業績、つまりは出した論文数が合否のかなりの部分を決めることになる。

ただ、あくまで僕個人の意見なんだけど、論文を出せるかどうかは運の要素が大きい。

どれだけ研究を頑張ったところで論文にできる結果が出ないなんてザラだし、もし逆にすごくいい結果が出ても、今度はその結果に見合う良いジャーナルに出そうということになって、論文のクオリティを上げるのに膨大な時間と労力がかかる。

つまり博士課程に入ってからお金をもらおうとしても、自分の努力ではどうにもならない場合が多い、と僕は思う。

研究計画書をうまく書くには、とにかく実際に採用された人がどんな計画書を書いているのかを知ることがほとんどすべてだ。

だけど研究計画書なんて個人情報の塊だからコネがないとまず手に入らない。

特に本当に採用された人のものは。

ネットで検索すればいくつか見つかるけど、あれをあんまり信じすぎるのはよくないと思ってる、っていうかそのとき思った。

僕は学部の同級生が奇跡的に(失礼)学振DC1に採用されていたので、下げたくない頭を下げて彼の申請書を見せてもらった。

もしまわりで学振やその他のお金くれる系に受かったとかいう人のうわさを聞いたらできるだけ早くその人に書いた申請書を見せてくれと頼むといい。

受かったばかりの人間なんてだいたい機嫌がよくて、人のために何かしたいという気持ちになっているから気前よく見せてくれる()。

ちなみに僕の親友の彼も研究室の先輩がDC1に受かっていて、その人の申請書を見せてもらったとのことだった。コネのちからよ。

そんな感じで実際に採用された申請書を手に入れられるかどうかでほぼ決まると思う。

だからくだらないプライドとかはちょっと捨てて、あまり知らない人にもお願いしてみるといい。

それで何百万円ももらえると思えば安いもんだと魂を売りましょう。おい

あとは申請書の書き方の本を軽く読んどくとか。

大学の図書館にもあるけど、みんな同じこと考えるからだいたい借りれないので、まぁそこはケチらず買いましょう。

 

僕は大上先生のお世話になりました。

(ちなみに下のリンクから買うと僕に小銭がふりこまれてしまうので気をつけて2冊買ってください笑)

学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ (KS科学一般書)

学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ (KS科学一般書)

 

 

理系の文章の書き方の基本もこのさい勉強しとくとあとあと役に立ちますよ。

有名な本があります。

(ちなみに僕のブログはあえて理系の文章力を封印して書いている、ということでブーメランはかわしていきたいです。ありがとうございます)

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

理科系の作文技術 (中公新書 (624))

 

 

だいぶ長くなってしまったので今日はこの辺で。

どうも読んでくれてありがとう。

続きはまた今度。モイモイ!

 

(つづきはこちら)

 

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2018/11/14 追記

学振に通った人にアドバイスを求めると、予想外の精神ダメージを受けることがあります。コネ万能説。