いつか博士になる人へ

あるポスドク研究員の思い出

研究の面接だって練習すればきっとうまくいくと思ってた時期が僕にもありました

こんにちは、森野キートスです。

 

そろそろこたつがみなさまのご家庭に召喚されていそうな今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。

 

僕はなんだか最近、パワーポイント芸人になりつつあります。

 

 

 

つまりはマイクロソフトにおおきくこうけんしているということで、いつビル・ゲイツからラブコールがくるのかとドキドキしながらみかんの皮をむいています。すっぱい。

 

さて、前回は奨学金プログラムの書類審査合格の連絡がきたので、次の面接試験の対策を努力とジョブズだけが友達さというアンパンマンみたいなノリでやっていたら気が狂ったという思い出を書きました(違)。

 

www.ki1tos.com

今回はそのつづきということで、いざ面接の日の話を書こうと思います。

では今日もよろしくお願いします。

 

面接当日

 

(村上春樹風イントロ)

そのとき僕はとある大学の工学部の建物を見上げていた。

僕は時間を調べようと思って左腕の腕時計を見た。

午後5時20分。

面接ーー午後5時30分から始まるーーの会場に着くにはちょうどいい時間だ。

15分前では早すぎるし、5分前では遅すぎる。

ちょうどパスタを茹でるみたいにね。

僕はその薄暗くカビの匂いのする古びた建物に入っていった。

すると突然、僕は違和感を感じた。

何かがおかしい。

どうやらその違和感は僕のおなかの方からきているようだ。

おそらくだが、どうやら僕はおなかが痛いらしい。

だが面接の時間まではあと8分しかない。

ふう、やれやれ。

神様はわりと試練を与えたがる。

僕は廊下の奥にトイレのマークを見つけ、どこまでもつづく深淵のような廊下を歩いて行ったーー。

 (イントロ終わり)

ふぅやれやれって言いたかった

 

午後5時28分。

僕は廊下のパイプ椅子に座った。

面接室からかすかに声が聞こえる。

まだ前の人の面接をしているのだろう。

よかった、なんとか間に合った。

数分後、部屋から同年代の青年がすがすがしい顔で出てきた。

「ありがとうございました」

彼は部屋の中に向かって頭を下げた。

そして僕の方をチラリと虫けらを見るような目で見た後、控室にきえていった。

「(ヤツはうかるな…頭よさそうだ…)」

そのとき僕は試験前にありがちな“まわりのヤツが皆自分より賢く見える状態”に陥っていた。

コンディションは最悪だ。帰ろうかな。

「次の方どうぞ」

部屋の中からアクマ(すいません)の声がとんでくる。くっ…ウワァァァン

僕「失礼します」

こうして僕の面接が始まった。

 

 

面接開始

 

まずは5分間のスライドを使った口頭発表。

ここは特につかえることもなく、時間どおりにやることができた。

試験官の先生方の表情を伺いながら話ができたのはほんと練習したかいがあった。

勝ったな。

 

そして10分間の質疑応答に入った。

まず司会の先生が口を開く。

「はい、森野さん、どうもありがとうございました。ではまず私から質問なんですが…」

 

キラー質問1「これまでの研究の中で一番大変だったことは何ですか?」

うっわっ…いきなり難しい質問キターッ。

いや最初はアイスブレイクで「今日はここまでどうやって来られたんですか?丸ノ内線ですか、それとも千代田線ですか?」みたいな質問期待してたぁー。

とりあえず考える時間をかせがないと…

僕「そうですね…一番というと…やはり…」

どうするどうする!?…

そうだここはとりあえずエピソードトークから入れば何かでてくるんじゃね?

ヘイ脳内Siri(?)、検索“今までで一番苦しかった思い出”

 

僕「〇〇の計算をしたとき…ですかね」

S先生「ほう」

僕「あのときは、何をすればいいのかわからなくて…そう、似たような先行研究が全く無くて。なのでとりあえず計算のやり方として考えられる方法を全て列挙して、一つ一つ妥当性を検討しました。その結果、現状でこれがベスト、という方法で計算し始めたんですが、想定外の問題が次々出てきまして。それをまた一つ一つ調べてはなんとか解決していくということをしました。もう、少し前進しては戻るみたいなことの繰り返しの日々で、大変でした」

S先生「なるほど。それは大変ですね。ありがとうございました。それでは他に質問をどうぞ」

えっ、これはどうなの?この答えでいいの?わかんない、まぁいいや次。

T先生「あの、反応の温度依存性の話なんですが…」

この後3つほど研究についてすぐ答えられる短い質問が続いた。

そうそう、こういう学会みたいな質問がいいわ。うぇるかむ。

K先生「あの、その〇〇っていう技術なんですけど…」

 

キラー質問2「何がすごいのか私にはわからない」

マァジか…なんだその質問?てか質問それ?

僕「えっと…そうですか、その、最初に申し上げたように、」

僕は発表で話したこの技術に意義をもう一度かいつまんで伝えた。

K先生「うん、それの何がすごいのかわかりませんね」

くっ…そっ…

僕「そう…ですか。それは私の説明が…足りなくて。なんというか…申し訳ありません」

K先生「うん…」

今思えばこのときK先生ともっと会話すればよかったと思う。

“先生はこれがすごいことではないと思われるんですか?”とか、“これって既存の技術でできることなんですか”とか聞いてみればもっといい落とし所にたどり着く糸口が見つかったんじゃないかと思う。

でもそのときの僕はこれ以上何も言えなかった。

 

次の質問。

Y先生「さきほど発表の中でいろいろとこの技術の応用例をあげておられましたけれど、それ以外に考えておられる何か良い応用はありますか?

えぇ、いろいろあげましたよ、出しきりましたよ。

他に?あるわけないじゃないっすか(もう疲れてる)

あぁあったわ、オレの妄想だけど。

それでいっか、夢語っとこ。

僕「そうですね。この技術は材料の性質上、ウェットな環境での利用が前提なんですが、僕としては将来ドライな環境でも使えるようにしたいと考えています。つまり水がない状況でも、同じ反応が起こせる(都合のいいすてきな夢の)材料にすることで、一気に応用可能性が広がると期待しています」

ここでJ先生「えっ…」

 

キラー質問3「いやそれはできないですよねぇ?」

今思えば当然の質問なんだが、このとき僕の中で何かがはじけた。

僕「いや、だからぁ!」

つい声を荒げる僕。

 

僕「…(ハッ)あ、すいません、失礼しました」

先生方「(失笑)」

僕「今できないからこそ、できるようにしたいなと」

J先生「あぁ」

S先生「では時間ですのでこれで終わりにしたいと思います。森野さんどうもありがとうございました」

オワッタァー…

僕「ありがとうございました」

 

 廊下に出るとスーツを着た女の子と目があった。

次に面接を受ける人だろう。

少し笑って僕に会釈をしてくれた。

僕も少し頭を下げた。

僕のようにはならないで。

 

こうして僕の面接は終わった。

 

 

結果発表の日

 

二週間後、工学部の掲示板に結果を見に行った。いちおう。

 

僕の番号があった。

 

あっ…えっ?…

 

おお…合…格?

やっ…たぁぁあああああああ!!!!!!!

ヒャッハァアアア!!!!!!!!!!!!

(半泣きでニヤケながら大学の掲示板を見つめプルプルする24歳男性が、そのときたしかにそこにいた)

 

あれでなんでうかったのかわからないけれど、自分に答えられる範囲で精一杯(ときには情熱的に)答えたのがよかった、と思いたい。

 

まじめに考えると、先生方はあの短い面接で学生が日頃どれだけ真剣に研究しているのか知りたいはず。

だから学生のその場の演技にだまされないように、いろいろ工夫をこらした質問をするんだろう。

そうすると学生の立場としては、大学の教授陣をだまそうと面接対策()をがんばるのではなく、日々の研究生活をがんばるのが一番いい面接対策になるのかもしれない。

 

つまりは僕の日頃のおこないが(以下略)

 

うれしくって研究室のみんなと焼き肉食べに行く例のやつやろうと思って走って居室に戻ったけど誰もいなくて、実験室に行ったら先生につかまりました。あぁ僕の焼き肉。

 

以上が僕が奨学金プログラムに採用された時の思い出。

長かったー。

ここまで読んでくれてほんとにありがとうございました。

それからの話もまた書けたら良いなと思います。 

 

その年は大学のイチョウがとてもキレイでした。

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ではまた!モイモイ!